第11回研究会 公共民俗学とはなにか
第11回研究会 公共民俗学とはなにか ―社会における知的実践のかたち―
日時:2011年9月10日(日)13:00~18:00
場所:成城大学 3号館321教室
表題:公共民俗学とはなにか ―社会における知的実践のかたち―
基調講演:
ロバート・バロン(Robert Baron)(New York State Council on the Arts)
「アメリカの公共民俗学―その課題と実践、そして展望―」
パネリスト:
菅豊(東京大学)「公共民俗学 ―社会における民俗学の再定置―」
吉村亜弥子(ウィスコンシン州立大学大学院)「ウィスコンシン州の公共民俗学実践とその教育」
コメンテーター:
小長谷英代(長崎県立大学)・橋本裕之(盛岡大学)
■コーディネーター:菅豊(東京大学)、小熊誠(神奈川大学)
■共催:日本民俗学会、現代民俗学会、公共民俗学研究会(科研基盤(B)「市民社会に対応する『公共民俗学』創成のための基礎研究」)
■その他:英語の講演、討論には通訳がつきます。
趣旨
公共民俗学(Public Folklore)は、現代アメリカ民俗学の重要な方向性です。それは1980年代から本格的に存在感を増し、いまではアメリカ民俗学の大きな潮流の一つとなっています。古くは芸術や文化、あるいは教育などに関する非大学の組織・機関での、応用的見地からなされる民俗学的な研究や活動を、それは意味していましたが、現在では公共機関の専門家のみならず、大学の研究者や、在野の研究者、市民なども協働する民俗学的活動に発展しています。それは「伝統の担い手と民俗学者、あるいは文化に関する専門家との協働的な取り組みを通じて、コミュニティ内部、あるいはコミュニティを越えて表れる新しい輪郭線と文脈のなかにある民衆伝統(folk traditions)を表象し応用する」〔Baron and Spitzer 1992〕民俗学であるといえます。公共民俗学では、具体的な社会実践のみならず、「擁護(advocacy)」や「文化の客体化(cultural objectification)」「介入(intervention)」「文化の仲介(cultural brokerage)」といった、民俗学が文化を考える上で重要なキーワードを再検討する理論研究も展開されてきました。それらは、社会実践を含め日本の民俗学にも通底する重要課題です。
今回、アメリカ公共民俗学のオピニオン・リーダーの一人であるロバート・バロン氏をお招きし、その基調講演を中心に公共民俗学の具体的論点、社会実践の実態、今後の展望、そして日本民俗学における公共民俗学の可能性について討議します。(文責:菅豊)
基調講演者の紹介:ロバート・バロン(Robert Baron)
ニューヨーク州芸術評議会(New York State Council on the Arts)上級プログラム・オフィサー。ペンシルバニア大学でfolklore and folklifeのPh. D.を取得し、ハーバード大学のW.E.B. Du Boisアフリカン-アメリカン研究所のフェロー、フルブライト基金のシニア・スペシャリスト、中大西洋フォークライフ協議会(The Middle Atlantic Folklife Association)会長などを歴任し、2002年にはアメリカ民俗学会からパブリック・フォークロアの優れた業績に与えられるBenjamin A. Botkin賞を授与される。
同氏は、アメリカ民俗学界のなかで大きな地位を占める公共民俗学者の中心的存在として活躍し、現在、ニューヨークにおいて公共民俗学の実践に携わる他、博物館における諸活動の実践と理論、さらに無形文化遺産保護政策に関して、アメリカのみならず日本や中国などでも調査研究を行っている。主著に、Public Folklore (1992, University Press of Mississippi, Nick Spitzerとの共編)、Sins of Objectification? Agency, Mediation, and Community Cultural Self-Determination in Public Folklore and Cultural Tourism Programming (Journal of American Folklore 123 (2010))など