第20回研究会 生活環境主義とは何か?
第20回研究会 生活環境主義とは何か?―民俗学の思想を問い直す
日 時:2013年11月16日(土)13:00~
場 所:東京大学東洋文化研究所・3階大会議室(本郷キャンパス)
登壇者:
基調講演者:
鳥越皓之(早稲田大学教授)
コメンテーター:
宮内泰介(北海道大学教授)
菅豊 (東京大学教授)
コーディネーター:
菅豊・室井康成(東京大学特任研究員)
趣旨:
生活環境主義とは、被害構造論、受益圏・受苦圏論、社会的ジレンマ論などとともに、日本の環境社会学において発展した重要な理論で、社会学者であり民俗学者でもある鳥越皓之氏や、嘉田由紀子氏らによって、1970年代末から提唱されてきた理論である。それは「ゆるやかなイデオロギー」であり、結果、「当該社会に居住する人々の生活の立場」という基本的な立ち位置から、地域住民の生活現場に立ち現れる環境問題を分析・考究する知識生産の指針となり、また、その現場で環境問題の解決を模索する社会実践の指針となってきた。
ディシプリンの壁を容易く乗り越え、民俗学と社会学を行き交う鳥越氏の方法や理論は、こと民俗学に限っては過剰なまでに看過されてきたように思えてならない。同氏らが提唱してきた生活環境主義が、実は柳田国男の「民俗学」にこそ、その淵源が求められた「民俗学の思想」であることを、残念なことに多くの民俗学研究者は知らない。また、その理論が社会学のみならず、現代社会のさまざまな場―政治も含め―で大きな影響力をもってきたこと、そしてそのゆるやかなイデオロギーが、文化をも巻き込んだ「生活主義」という形で、民俗学の方法として昇華される可能性があることにも、惜しいことにおおかたの民俗学研究者が気がついていない。
本研究会では、生活環境主義のオピニオン・リーダーともいえる鳥越皓之氏をお招きし、いまだ民俗学で十分に検討されていない「民俗学の思想」=生活環境主義の生成過程、具体的な意味内容、その有効性と課題、そして「生活」を基盤とし優先するこの思想の民俗学における意義について基調講演をしていただく。それをベースに、鳥越氏と参加者とで「民俗学の思想」を問い直す議論を深めたいと考えている。(文責:菅豊)。
主催/共催:現代民俗学会、「新しい野の学問」研究会(科研「現代市民社会における『公共民俗学』の応用に関する研究―『新しい野の学問』の構築―」(代表者:菅豊)/東京大学東洋文化研究所班研究「東アジアにおける『民俗学』の方法的課題」