第28回研究会 物質文化研究の新地平

第28回研究会 物質文化研究の新地平

日 時: 2015年8月1日(土)13:00~
会 場:神戸大学鶴甲第一キャンパスF棟301号教室
発表者:
 後藤明(南山大学)
 大西秀之(同志社女子大学)
コメンテーター:
 島村恭則(関西学院大学)
コーディネーター:
 梅屋潔(神戸大学)

趣旨:

 欧米の民俗学には、長い口承文芸研究の系譜とともに、物質文化/フォークライフ研究の系譜が存在している。これは、北欧をはじめとするヨーロッパの周縁部で野外博物館の展開と関わりながら発展した研究領域で、のちにアメリカに伝わり、ヨーダー(Don Yoder)、グラッシー(Henry Glassie)、ジョーンズ(Michael Owen Jones)、ブロナー(Simon J. Bronner)といった研究者によって大きな成果があげられて現在にいたっている。今回は、とくにアメリカ民俗学における物質文化/フォークライフ研究のあり方を検討しつつ、これを歴史考古学や技術人類学などにおいて展開されてきた物質文化研究のより広い動向の中に位置付け、現代民俗学における物質文化研究の可能性と課題について考えたい。(文責:島村恭則)

後藤明(南山大学)
「技術人類学における米国物質文化研究」
 1980年代、当時主流のプロセス考古学に対立して台頭した英国のポスト・プロセス考古学はビンフォードなど米国の先史考古学者を批判する一方、グラッシーら民俗学、あるいはディーツやレオーネなど歴史考古学者に親和性を示した。米国の物質文化研究や歴史考古学には人類学の「王道」先住民研究、また欧州系のみならず、アフリカ系やアジア系移民への目配りもあった。さらにブロナーやジョーンズらの研究は、フランスの動作連鎖論、また近年の物質的関与論やインゴルドの「生の人類学」に接合する視座を含んでいることなどを論じたい。

大西秀之(同志社女子大学)
「物質文化研究は「モノ」語りか?―非言語的実践の追究をめぐる民族誌アプローチ―」
 人文社会科学では、近年、モノをめぐる理論がにわかに注目を集め、また活発な議論や研究が行われているように窺える。ただ、そこでのアプローチの多くは、あくまでもコトバに依拠したものとなっている感が否めない。このような潮流を踏まえ、本報告では、日常世界における非言語的実践を対象として、一般に「物質文化研究」とされる研究群の再検討を試みる。こうした再検討を通し、非言語的実践に対する民族誌アプローチの可能性を示すと同時に、そもそも「物質文化研究」とはモノを対象とする研究なのか、という根源的な異議申し立てを提起する。なお、本報告では、理論背景としてフランス社会学・人類学を参照するとともに、日本の民俗学的研究との接合も射程に入れる。

■主催:現代民俗学会