第41回研究会 ジェンダー・セクシュアリティからみる近現代

第41回研究会 ジェンダー・セクシュアリティからみる近現代―民俗学と歴史学の視点から―

日 時: 2018年4月30日(月)14:00~17:30
会 場: 成城大学図書館地下2階AVホール

趣旨説明:
 菊田祥子(成城大学大学院博士課程後期)
発表者:
 菊田祥子

 「日本都市の祭礼・祝祭にみるジェンダー・セクシュアリティ」

 小泉友則(立命館大学非常勤講師)

 「女児の性的早熟論と植民地主義・帝国主義―利用される女児のジェンダー・セクシュアリティ―」

コメント:
 靏理恵子(跡見学園女子大学)

司会:
 髙木まどか(成城大学大学院博士課程後期)

コーディネーター:
 高木まどか・菊田祥子

趣旨:

 日本民俗学は、人文社会科学領域において女性の生に真っ先に着目した学問であった。したがって、女性の生活にかかる研究は、民俗学の揺籃期から現在に至るまでの間に非常に多く緻密に蓄積されている。しかし、「分析視角としてのジェンダー」を意識した研究は、2000年代中盤から増え始めたばかりである。セクシュアリティに触れる研究についても同様の傾向がみられる。セクシュアリティについても、赤松啓介以来の研究蓄積があるが、正面から扱ってきたものはさほど多くない。すなわち、ジェンダー・セクシュアリティを鍵概念とした研究は、両者とも、民俗学で今後発展していく可能性が高い研究領域であろう。さらに、ジェンダー・セクシュアリティを関連付けて捉えようとする研究も、将来進展することが大いに考えられる。
 以上の問題意識を前提に、本研究会では、日本の近現代におけるジェンダー・セクシュアリティを鑑みる目的で、2名の発表を中心に議論をしたい。
 菊田祥子氏は都市祭礼・祝祭の先行研究群におけるジェンダー・セクシュアリティに着目し、今後の展望を示す。都市祭礼・祝祭は、当該地域における権力構造や価値観が、日常の場以上に濃縮されて現れる時空間である。各先行事例および菊田氏の調査結果から析出されるジェンダー・セクシュアリティ規範は、日本全国を射程とした各中間地域におけるそれらの規範を帰納する一助となるであろう。
 小泉友則氏は歴史学の立場から、日本の近世後期から明治後期には、特定の条件を満たす環境に身を置く地域の女児が、性的に早熟することがあるとする「女児の性的早熟論」と呼ぶべきものが医学者を中心に主張されていたことに着目する。小泉氏は、その主張が時代変遷の中で、「野蛮」国や「未開」国のもつ環境が女児の性的早熟を引き起こすという帝国主義的な主張へと変容していく様子を記述し、男児ではなく女児というジェンダーが国際政治上の指標として扱われていく様子を明らかにする。その上で、そのような主張は現代にまで影響していることを示す。小泉氏の発表は、ジェンダー・セクシュアリティの両概念を明白に架橋する。
 本研究会は、日本民俗学における「「女性化」したジェンダー概念」の問題にも一石を投じる。「ジェンダーの構築性や権力の生成過程が「女」という性に限定されるわけではないこと、ジェンダー研究がフェミニズム思想と決別可能であること」を、2名の発表および、男性である小泉氏の立場性から明確にしうるであろう。(文責:菊田祥子)

共催:女性民俗学研究会