第54回研究会「どうしてこれが民俗学!?」

第54回研究会「どうしてこれが民俗学!?:カフェ・で・ヴァナキュラーの試み」

■現代民俗学会会員の方には、開催日前日までに、会員向けメーリングリストを通じて、参加に必要なZoomのID・パスコード等をご連絡いたします
■本研究会は、非会員の方にも事前申し込みの上でご参加いただくことが可能です。下記の登録方法をよくお読みください。

日 時:2021年3月20日(土・春分の日)13:00~17:00
会 場:オンライン(Zoom)によるリアルタイム開催

報告者:
 倉石美都(韓国・京畿大学校)
 「韓国におけるせめぎあうヴァナキュラー」
 陸薇薇(中国・東南大学)
 「中日のトラックドライバーのヴァナキュラー」
 辻本侑生(民間企業勤務)
 「「切実さ」と「好奇心」の狭間としての民俗学の可能性」
コーディネーター:土居浩(ものつくり大学)、島村恭則(関西学院大学)

趣旨:

 2020年11月に『みんなの民俗学:ヴァナキュラーってなんだ!?』(島村恭則著、平凡社新書)が刊行されました。本書は、ヴァナキュラー(=〈俗〉)という概念を導入することで現代の日常に対する民俗学的アプローチが可能となることを示すとともに、現代民俗学の面白さを広く世の中に伝えようとした本です。この本の帯には、「どうしてこれが民俗学!?」と記されていますが、これは本書の試みが、一般社会で流通している民俗学のイメージを大きく刷新する内容であること表わしています。
 本研究会は、本書の路線を出発点に、さらに広く、深く、豊かな現代民俗学のあり方を、次代を担う若い世代の研究者たちによる自由な議論によって探っていこうとする試みです。サブタイトルを「カフェ・で・ヴァナキュラーの試み」としたのは、自由な議論をうながすための仕掛けであったはずの「談話」や「懇親」の場を、なんとかオンライン上でも企てられないか、との目論見からです。もちろん「哲学カフェ」「デス(死生学)カフェ」等々の試みにも触発されていますが、なにより『みんなの民俗学』が取り上げた「喫茶店モーニング」のような雰囲気こそが、『みんなの民俗学』を議論するに相応しいと考えたからです。
 こうした趣旨のもと、具体的には次の3名の報告者による発題と、それにつづく参加者全員による自由なディスカッションを行っていきます。

倉石美都 「韓国におけるせめぎあうヴァナキュラー」

 韓国社会では、社会全体が男女平等をめざすことによって、これまで男性のヴァナキュラー、女性のヴァナキュラーと区別されていたものの境界が曖昧になってきている。そしてこのことがまた、性別間、あるいは世代間のせめぎあいとなって現れるようにもなっている。外国人として、女性として、教員としての目から韓国のヴァナキュラーをどのように扱っていくか、日本のヴァナキュラーとも比較しながら議論していきたい。

陸薇薇 「中日のトラックドライバーのヴァナキュラー」

 『みんなの民俗学』で論じられているヴァナキュラーの考え方を参考に、中国のトラックドライバーの間にみられるヴァナキュラーを一例として取り上げ、現代中国におけるヴァナキュラー研究の可能性を考える。また、報告者は『みんなの民俗学』の中国語版(浙江大学出版社より刊行予定)の翻訳者でもあることから、中国語版『みんなの民俗学』をめぐる話題についても提供する。

辻本侑生 「「切実さ」と「好奇心」の狭間としての民俗学の可能性」

 『みんなの民俗学』の冒頭部では、幼少期から高校生の時までの著者の切実な問題が、民俗学に出会うことで解決するエピソードが描かれている。この書籍を読んで、私は、民俗学とは自他の「切実さ」と「好奇心」とを往還しつつ行われる実践ではないかと考えた。本報告では、発表者がこれまで関わってきた現場(年越し派遣村、焼畑山村、津波常習地、差別研究、ケア研究)での経験を素材として提供し、特に不安定な社会経済的環境に置かれた若手研究者が「切実さ」と「好奇心」の狭間で悩みながら実践する方法について、思いを共有しながら議論する端緒を開きたい。