第65回研究会「中間集団の民俗学」
第65回研究会「中間集団の民俗学-集団を軟体として考える-」
ご案内:
■現代民俗学会会員の方には、開催日前日までに、会員向けメーリングリストを通じて、参加に必要なZoomのID・パスコード等をご連絡いたします。
■本研究会は、非会員の方にも事前申し込みの上でご参加いただくことが可能です。下記の登録方法をよくお読みください。
日時:2023年1月21日(土)13:00~17:00
会場:オンライン開催(オンライン会議システムZoomを使用)
発表者:
東城義則(立命館大学)
「問いとしての中間集団-趣旨説明に代えて-」
鈴木昂太(東京文化財研究所)
「民俗芸能は誰のもの?:比婆荒神神楽をめぐる人・組織・公共性」(仮)
真柄侑(東北学院大学)
「農協からとらえる現代の農業と農家について―岩手県紫波郡紫波町を事例に―」
吉村健司(本部町教育委員会/国立民族学博物館)
「地域自治組織としての漁業協同組合」(仮)
コーディネーター:
東城義則、島村恭則(関西学院大学)
趣旨:
本研究会は、歴史的かつ外発的事情により形成された中間集団を扱うことで、民俗学における集団研究の方向性について議論することを目的としている。
中間集団(intermediate group)とは、個人によって形成される私の領域と、国家によって形成される公の領域を橋渡しする社会集団にあたる(e.g.佐々木毅・金泰昌編 2004『中間集団が開く公共性』東京大学出版会、デュルケム 1971『社会分業論』青木書店、デュルケム 1985『自殺論』中央公論新社)。主に社会学や政治学の領域で論じられ、日本の民俗学においても公団住宅や東日本大震災を例とした住民自治の視点(篠原聡子 2011「赤羽台団地の共用空間と居住者ネットワーク」『国立歴史民俗博物館研究報告』171号、加藤秀雄 2017「震災被災地における中間集団と相互扶助―伝承と自治の再生に向けて-」『成城文藝』240号)や、銃後美談を例とした権力による集団の形成と同調化(善意の「中間集団全体主義」)(重信幸彦 2019『みんなで戦争 銃後美談と動員のフォークロア』青弓社)等を主題として論じられてきた。
その一方で、これらの研究で論じられた中間集団の特徴は、宮座や講といった集団でも論じることが可能である。宮座や講に代表される日本の集団研究は、意思決定の方式や成員の権限、相互扶助の様子といった集団活動の特徴や集団の有する権利、集団の社会的機能を解明することに重点を置いてきた。また研究対象としても、血縁や地縁を媒介とする集団を中心としてきた傾向にある(e.g. 国立歴史民俗博物館編 2011『宮座と社会-その歴史と構造』国立歴史民俗博物館研究報告集161号、長谷部八朗(監修)・講研究会編集委員会(編) 2022『人のつながりの歴史・民俗・宗教―「講」の文化論―』八千代出版)。
これらの集団に加え、近年では保存会に代表される歴史的かつ外発的事情により形成された集団についても研究が行われている。例えば保存会の研究では、集団の組織や構成原理といった内的事情に加え、文化財行政の脈絡における集団の表象や特権化といった外的事情について指摘されており、本研究会の趣旨とも共通する論点を提示している(俵木悟 2009「民俗芸能の「現在」から何を学ぶか」『現代民俗学研究』1号、俵木悟 2018『文化財/文化遺産としての民俗芸能:無形文化遺産時代の研究と保護』勉誠出版)。
以上を前提として、本研究会では歴史的かつ外発的事情により形成された中間集団を取り上げることで、民俗学における集団研究の方向性やテーマについて議論を行う。研究会では、三名の方に講社・保存会、農業協同組合、漁業協同組合の組織、活動、成員個人の実践等についてお話をいただく。三名の方に各集団の形成経緯や集団内部の意思決定、集団に属する個人の活動についてご報告いただくことで、公(官)の統制、私(民)の主張、両者の影響を受けて形成される中間集団も、実際には団体や組合といった組織や、活動する土地の状況によって異なるモチーフを有する集団であることを確認する。そのうえで民俗学における集団研究の意義と方向性を共有し、中間集団を問うことで派生する研究テーマについて議論する。(文責:東城)