第68回研究会「環境民俗学の現代的課題を探る」
第68回研究会「環境民俗学の現代的課題を探る:「ふえる/へる、ふやす/へらす」という視点から考える自然と人間の関係」
ご案内:
■現代民俗学会会員の方には、開催日前日までに、会員向けメーリングリストを通じて、参加に必要なZoomのID・パスコード等をご連絡いたします。
■本研究会は、非会員の方にも事前申し込みの上でご参加いただくことが可能です。下記の登録方法をよくお読みください。
日時:2023年3月26日(日)13:00~17:00
会場:オンライン開催(オンライン会議システムZoomを使用)
タイムテーブル:
13:00~13:30 趣旨説明:加藤秀雄(滋賀県立琵琶湖博物館)「趣旨説明:環境民俗学の研究史と本会の趣旨説明」
13:30~14:30 発表1:福永真弓(東京大学)「あわいに生きるものの民俗誌」
14:30~15:30 発表2:北川真紀(東京大学)「どのように山を〈みる〉のか―狩猟者の量感と手続きとしての可視化」
15:30~15:45 休憩
15:45〜16:00 コメント:渡部圭一(京都先端科学大学)
16:00~17:00 総合討議
司会:川田牧人(成城大学)
コーディネーター:加藤秀雄、川田牧人
趣旨:
民俗学において自然と人間の関係を扱う領域は生態民俗学、民俗自然誌、環境民俗学などと呼ばれ、1990年代以降、多様なアプローチによる研究の蓄積が進んだ。2001年にその研究動向を整理した菅豊は、これらの研究領域が環境問題に対する関心の高まりなど、「現代社会の外在的変化」に影響を受けて隆盛したと指摘している(菅豊 2001「自然をめぐる民俗研究の三つの潮流」『日本民俗学』227号)。それから20年経った現在、大災害、気候変動、パンデミックといった様々な出来事をとおして私たちは、あらためて自然と人間の関係の「これまで」と「これから」を、問わざるを得ない状況に直面している。
このような状況を念頭に置き、本研究会では、自然と人間の関係を、現代民俗学はどのように論じればよいかを検討したい。特に今回、力を入れて議論したいのは、ある自然界の存在が「ふえる/へる」現象と、人間が自然界の存在を「ふやす/へらす」ために行う行為を、どのように民俗誌の中で描くかという問題である。千葉徳爾の『はげ山の研究』(1956)が明らかにしたように、自然界の存在は人間の生活と強い関わりを持ちながら増減する。そして、これを「ふやす/へらす」ための行為や知識も民俗学の研究対象とされてきた。それには自然界の存在に対する民俗知、信仰、まじないなども含まれる。
しかし現代においては、それらにとって代わり、科学による自然の対象化と働きかけが重要性を増している。これまで不可視、不可知であった自然界の存在(例えば微生物、ウィルス、化学物質など)や現象を科学は認識可能にし、それが「ふえる/へる」ことも量的に把握可能なものにした。またそれらを「ふやす/へらす」ための科学的知見と、それにもとづく実践が様々なフィールドで見出される現代社会において、「科学」を抜きにして自然と人間の関係を描いても、その民俗誌は不十分なものとなってしまうだろう。
以上のような問題意識から本研究会では、従来の自然と人間の関係をめぐる民俗学的研究の流れを整理し、そこにどのような課題があるのか明らかにする。その上で具体的な研究の事例を見ながら、今後の方向性を模索したい。今回、報告を行う二人の研究者は、綿密なフィールドワークに基づき環境社会学、文化人類学の領域で先駆的な取り組みを行っているが、民俗学の側からこれにどのような応答ができるのか、登壇者だけでなく参加者も交えて議論を行いたい。(文責:加藤秀雄)
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