2012年度年次大会
2012年度年次大会
日時:2012年5月26日(土)10:00~18:00
場所:成城大学 321教室
(1)個人研究発表 10:00~11:30
10:00~10:30
中里 亮平(長野大学非常勤講師)「現代社会における「地域」の概念に関する考察」
10:30~11:00
東城 義則(総合研究大学院大学 文化科学研究科)「鹿を寄せ集める技法 ―「鹿寄せ」の担い手と鹿との関係をめぐって―」
11:00~11:25
林 圭史(筑波大学人文社会エリア支援室)「民俗行事の〈担い手〉に関する一考察 ―対立が育てる地区の行事―」
(2)会員総会(第一部) 11:30~12:30
・事業報告
・会計報告
・監査選出
(3)年次大会シンポジウム 13:30~17:00
「民俗学的〈技法〉の構築を目指して ―方法としてのナラティヴ」
登壇者:
足立 重和(追手門学院大学)「語りとリアリティ研究の可能性 ――社会学と民俗学の接点から」
法橋 量(慶応義塾大学)「『日常の語り』と『語りの日常』 ―ドイツ民俗学におけるオーラリティ」
門田 岳久(立教大学)「〈対話〉のパフォーマティヴィティ ―民俗学における3つのナラティヴ」
趣旨:
本シンポジウムでは、日本の民俗学における「方法としてのナラティヴの構築」を志向、模索する。近年民俗学でもオーラリティやナラティヴに関する議論が徐々に増加しているが、これを民俗学の一つの「ジャンル」として再定位する動きとして矮小化するのではなく、民俗学全体の認識に関わる議論へと結びつけていく必要がある。というのも1960年代以降の日本の民俗学では、歴史学との関係が強調されてきたことにより、聞き書きによるオーラル・データの扱いが、あたかも文書資料を補うもののように扱われ、かつ聞き書きという手法も、何かしらの「事実」を探る手段としてしか捉えてこなかった経緯があるからだ。オーラルなナラティヴはあくまで主観的な発話や言説にすぎない。にも拘らずそれを方法的に深化させずにきたことが、いつまでも「歴史補助学」として周辺に置かれることに甘んじる特異な構造をもたらしてきた。またナラティヴは歴史的な「事実」を保証できるものではないにも拘らず、その資料的吟味もないまま補完的な「事実」を示そうと、未だに科学的に極めて危うい資料操作がなされ続けているのが現状である。ナラティヴという技法を捉え直すことは、民俗学に底流するこうした問題を根本的に再考することになるだろう。
本シンポジウムでは、社会学の立場からナラティヴを機能的側面から捉え新たな視界を拓きつつある足立重和氏、ドイツ民俗学におけるナラティヴ研究に詳しい法橋量氏を登壇者に招く。法橋氏の報告するドイツ民俗学では、「日常の語り」に関する研究蓄積が従前の語り研究(≒口承文芸研究)を超え、形式・機能・意識などの関係性を問い、ナラティヴ自体を文化として対象化させるレベルにまで方法的深化を遂げている。また足立氏はインフォーマントのモノローグ的な語りのみならず、地域おこしや環境保全問題など、ローカル・ガバナンスの現場における対話的なナラティヴにまで視野を含めた手法を提唱している。さらに門田岳久氏がもう一人の登壇者として、生活史研究における「経験的語り」概念や口承文芸研究で独自に展開されてきた「語り手」研究を再考しつつ、ナラティヴに関する近年の議論を日本の民俗学へと文脈化させる作業を行う。
以上の登壇者を中心に、本シンポジウムでは、民俗学にとってナラティヴとは何か、また人が何かを物語るという行為とは何かを問い直し、「聞き書き」という調査手法や、民俗学がこれらに着目してきた意義を、民俗学におけるひとつの有効な「方法」として定位させることを目指している。
■共催:科研基盤(B)「民俗学的実践と市民社会―大学・文化行政・市民活動の社会的布置に関する日独比較」
(4)会員総会(第二部)17:30~18:00
・開票結果報告