2019年度年次大会

2019年度年次大会

日 時:2019年5月25日(土)11:00~
場 所:お茶の水女子大学本館306号室 警備体制の強化から【身分証明書の提示】が会場の大学構内に入る際に必要ですので、必ずご持参ください。 また、大会当日、付属校の行事も開催され多数の父兄が来校するとのことです。
当日は、以下の手続きをお取りください。
1.守衛に身分証を提示し、現代民俗学会参加を伝える。
2.名簿に名前を記す。
3.黄色いひもの付いた名札をもらい、学内では常に身に付ける。
4.帰るときに名札を守衛に返す。

(1)個人研究発表 11:00~12:00

11:00~ 第一報告
   佐々木陽子
   「枕崎の漁村に存在した「1人花嫁」」
11:30~ 第二報告
   金城ハウプトマン朱美(富山県立大学)
   「現代のドイツ民俗学における口承文芸研究について―ドイツ民俗学会口承文芸研究部会の活動をもとに―」

(2)会員総会 12:00~12:45

(3)シンポジウム 13:30~17:00

「民俗学のアジア、人類学の日本」

発表者:
片岡樹(京都大学)「東南アジア研究者が見た日本宗教」(仮)
黄潔(京都大学)「氏神研究から見た華南少数民族」(仮)
ディスカッサント:
川田牧人(成城大学)、川瀬由高(江戸川大学)
コーディネーター:
木村周平(筑波大学)、武井基晃(筑波大学)

シンポジウム趣旨:

 人類は、歴史的に見れば、遊動から定住へという傾向にある。だがそうであっても(あるいは、そうだからこそ)、移動や交流のモードはあらゆる地域や時代に存在し、人びとはつねに持続と変化のなかで暮らしをつくりあげてきた。科学技術に媒介されたグローバリゼーションは、現代的な流動性や革新性を印象づけるかもしれない。だが、東アジアにおける政治と経済のネットワークの成立はそれより二千年も遡ることができる。他方私たちは、地域に根差した“伝統”が、あっという間に変容してしまうことも、あるいは災厄に面して強固さを示すことも目撃してきた。
 本シンポジウムは、以上をふまえたうえで、「民俗学のアジア、人類学の日本」というタイトルのもと、どのように人びとの暮らしを捉えるかを具体的に考えたい。アジア地域における水陸の経路を通じた交流では、人間が移動するだけでなく、モノや貨幣が行き来し、技術や制度、観念などが伝えられた。他方で、この地域ではひろく農耕しながら定住する暮らし方も行われ、親族を軸にしてある程度の規模で安定的な社会集団を形成してきた。それゆえ、この地域の暮らしには、現時点での政治経済に規定された境界線をいったん括弧に入れたうえで、差異と共通性とを考え直す必要性が見いだされる。
 しかし、残念ながら、それを捉える学問の眼差しは、まだまだ既存の制度に規定されたままではないだろうか。ここで念頭に置いているのは、「世界民俗学」の構想を草創期から有しつつも、対象とする国内地域社会を超えて議論を拡げることをあまり好まない民俗学と、冷戦期の政治状況を背景とした地域の枠組みのなかで、日本との現代の政治経済的なつながりは意識しても、日本の中まではあまり目を向けないままでいる、東アジア・東南アジアの人類学である。そこで本シンポジウムは、やや挑発的に、アジアと民俗学、日本と人類学と逆転させてつなぎ、それを議論の手がかりとしてみたい。民俗学的な方法からは、どのように東アジアが見えてくるのか。あるいは東南アジア人類学には、どのような日本が浮かび上がるのか。
 ここで確認しておきたいのは、本シンポジウムは、民俗学と人類学という二つの学問の交流にとどまらず、むしろより具体的かつ意欲的に、方法論の検討に強調点を置きたい、ということである。民俗学と文化人類学(ないし、かつての学会名である民族学)との間――「二つのミンゾク学」と呼ばれる――の微妙な関係性については、これまでも多くの議論がなされてきた。本学会においても5年前にこのテーマで研究会が行われ、主に学史的な検討のなかでこの問題が取り扱われた(川田牧人編『二つのミンゾク学から世界民俗学、そしてその先:グローバルでローカルで複数のフォークロア研究へ』成城大学グローカル研究センター、2016年)。それに対し本シンポジウムでは、そこで川田が示した「〇〇(地域)で民俗学をやっている」という表現を手がかりとしながら、具体的な研究事例をもとに議論する。それによって、民俗学/人類学という制度や、そこで継承されてきた方法を自明のものとせず、「人びとの暮らしの何に目を向け、どう捉えるか」を正面から議論したい。
(文責:木村周平、武井基晃)

主催:現代民俗学会  共催:お茶の水女子大学 グローバルリーダーシップ研究所 比較日本学教育研究部門