2021年度年次大会

2021年度年次大会

■現代民俗学会会員の方には、開催日前日までに、会員向けメーリングリストを通じて、参加に必要なZoomのID・パスコード等をご連絡いたします
■本研究会は、非会員の方にも事前申し込みの上でご参加いただくことが可能です。下記の登録方法をよくお読みください。
日 時:2021年5月22日(土)
場 所:オンライン開催(Zoom使用)

(1)個人研究発表 9:30〜12:00

9:30~ 第一報告
   丹羽英二(神奈川大学歴史民俗資料学研究科)
   「日本酒醸造企業における祭祀・儀礼について―保持・変容・新出する宗教的習俗とビジネス性の交錯―」
9:55~ 第二報告
   岡本真生(園田学園女子大学)
   「無数の想念の輻輳における相互作用の一考察―場当たり的な実践を重ねる集団Aの事例から―」
10:20~ 第三報告
   三津山智香(筑波大学非常勤職員)
   「「勝善神社受納帳」にみる神社への奉納物の変遷―福島県白河市の勝善神社を事例に―」

10:45~ 第四報告
   森戸日咲子(筑波大学人文社会科学研究科)
   「山車人形の題材選定及び評価にみる社会性」

11:10~ 第五報告
   オ夢茜(東京大学総合文化研究科)
   「制度によって生み出される民間芸術―中国における「上海剪紙」を事例に―」

11:35~ 第六報告
   山下茉莉花(関西学院大学社会学研究科)
   「反出生主義のオンライン・コミュニティ」

(2)会員総会 12:00~

(3)シンポジウム 13:30~

「インターネットと民俗学」(シリーズ:メディア社会のフォークロア第1回)

趣旨説明:

廣田龍平(江戸川大学非常勤講師)

発表者:
三隅貴史(関西学院大学大学院研究員)「英語圏におけるインターネット・フォークロア研究の蓄積と課題」
加藤秀雄(成城大学民俗学研究所研究員)「現代民俗としての「虹の橋」」
廣田龍平(江戸川大学非常勤講師)「進化する実況系怪談 口承文芸的アナロジーを拡張する」
コメンテーター:
飯倉義之(國學院大學)
司会:
菅豊(東京大学)、島村恭則(関西学院大学)
コーディネーター:
菅豊、島村恭則、廣田龍平、三隅貴史

趣旨:

 今、あなたはどうやってこの文章を読んでいるだろうか? ――言うまでもなく、インターネットを通じて、であろう。学会の告知一つ読むにも、私たちはこのグローバルな電子通信網に頼らざるを得ない。あらゆるところにそれがある、そういう生活を私たちは生きている。それならば、今さらことさらに「インターネット」を俎上に載せるなど、まして何らかの点で目新しい主題として取り上げるなど、前世紀ならともかく、時代錯誤にも程があるのではないか? 実際、現在の私たちは他分野の研究者と同じように、文献調査においてもフィールドワークにおいても、インターネットを通じた情報を当然のように使いこなしている。また、学会誌で「行事の参加者はネット上で情報を得て……」や「この団体のSNS投稿を引用すると……」といった記述を見るのも、さほど珍しいことではなくなっている。
 しかしひるがえって日本民俗学は、インターネット上に現れた民俗的創造性それ自体に、どれだけ目を向けてこられただろうか。黎明期の1990年代を思い起こすだけでも、パソコン通信の時代から受け継がれた独特の言語や文字の用法、制約の多いなか個人が工夫を凝らして創り上げたウェブサイト、アンダーグラウンドのハッカー文化やアダルトサイト、チェーンメールなど、アーカイブサイトにさえ断片しか残っていない、独創的な民俗が無数存在していた。2000年代以降の発展は言うまでもない。匿名掲示板やブログ、そして2010年代以降のSNSの普及は、通信環境の向上とともに、もはや誰にも把握できないくらいの情報を蓄積しつづけている。インターネットを利用する人々は、そうした民俗をほとんど毎日のように生産し、受容し、継承し、変形し、拡散している――にもかかわらず、日本民俗学は、この潜在的な創造性の群れを、ほとんど見過ごしてきた。
 もちろん、まったく論考がないわけではない。90年代から散発的に言及はなされている。何よりも重要な成果として、伊藤龍平の『ネットロア』(2016)を挙げなければならないだろう。伊藤はおもに2000年代の匿名掲示板に見られる「怖い話」を題材として、インターネットの「古い部分」(従来の口承文芸に近い要素)に目を配りつつ、その特徴を剔抉しようとしている。また倉石忠彦も『都市化のなかの民俗学』(2018)において「仮想空間と民俗学」という章を設けている。
 だが、そうした日本語圏の業績の多くには、必ずしも十分とは言えないところがある。社会学やメディア研究など隣接分野は引いているにもかかわらず、すでに多くの蓄積がある欧米圏の民俗学をほとんど参照していないのである。そもそもアメリカに端を発し、事実としてグローバルな領域であるインターネットの民俗的創造性を検討しようとするならば、分析の枠組みを借りるにしても事例を比較するにしても、あるいは批判的に取り扱うにしても、同分野他言語における先行研究に触れずにいることはできないのではないか。特に、SNSのリコメンデーション機能が言語を意図的に横断し、サブスクリプションサービスが多言語に対応し、各所で機械翻訳が日常的に利用されている現在、非日本語圏の「ミーム」もまた否応なしに私たちの視野に入ってきているのだから、それらについてなされてきた/今まさになされている民俗学的業績は、日本民俗学におけるインターネット研究にとって、決定的な意味を持ってくるはずだ。
 本シンポジウムは以上の問題意識をふまえ、インターネットを民俗学するための新たな「叩き台」を日本民俗学に提示することを目的として組織されている。まず『ネットロア』をはじめとする日本語圏での成果を確認したうえで、英語圏での研究がどのような展開をしてきたのか、私たちがどのようにそれを批判的に継承できるのかが論じられる。後半では、従来の研究における主要な枠組みである口承文芸研究にもとづく議論にどのような可能性があるのかを、2つの事例研究によって提示する。(文責・廣󠄁田龍平)

三隅貴史 「英語圏におけるインターネット・フォークロア研究の蓄積と課題」

 英語圏の民俗学においては、インターネット上の民俗にかんする研究(以下、インターネット・フォークロア研究とする)の蓄積が積み重ねられている。インターネット・フォークロア研究の前史として、1970年代半ばからのゼロックス・ロア、コンピュータ・ロアにかんする研究があげられる。これらの研究のうえで、1990年代のインターネットの大衆化や、近代化にともなう民俗の消滅の危機を受けて、インターネット上における民俗に注目が集まった。そして、それ以降、様々な研究が生み出されるに至っている。
 本発表では、なぜ民俗学の研究対象がインターネット上にまで拡張されてきたのかという学史と、インターネット・フォークロア研究においてどのような理論的課題が検討されてきたのかという研究目的の二つを中心的に論じる。そして、これらの議論をふまえた上で、日本の民俗学においてどのようなインターネット・フォークロア研究が可能なのかについて考察する。

加藤秀雄 「現代民俗としての「虹の橋」」

 本発表では、「インターネットの民俗学」のケーススタディの対象として、「虹の橋」という話を取り上げる。「虹の橋」とは、ペットが亡くなった際に向かうとされる他界の定型的なモチーフで、現在はWeb上で比較的容易に、これと関わる語りを見つけることができる。この話は、20世紀末にアメリカで発生したものが世界中に伝播したもので、その拡散にインターネットが果たした役割は極めて大きなものであった。現在の日本では「虹の橋」と刻まれた動物供養塔や、社名としてこれを用いるペット葬祭業社が現れるなど、ネット空間だけでなく現実世界にも影響を及ぼしはじめている。本発表では、その発生から伝播に至るプロセスと現状について報告を行い、これがどのような社会的背景によって拡がりをみせたものであるのかを論じたい。

廣󠄁田龍平 「進化する実況系怪談 口承文芸的アナロジーを拡張する」

 これまでの民俗学的なインターネット研究では、題材の選択や分析の手法において、口承文芸研究的に行なわれるものが目立っていた。たとえば、もっとも有名な主題「スレンダーマン」は「現代伝説」と見なされていたし、伊藤龍平『ネットロア』は意図的に「古い」口承文芸研究の枠組みを用いていた。これは2000年代まで主な発信源が文字中心の電子掲示板やブログだったことに呼応しているのだろう。だが、2009年に現れたスレンダーマンがそもそも画像を発端としていたように、とりわけ2010年代以降、流通する情報は急速にマルチモーダルになってきている。それに従い、ネットならではの「怖い話」である「実況系怪談」——異常事態のさなかにある人物が、逐一状況を報告する――もまた、文字だけのものから画像付き、さらにはライブ配信へと進化している。本発表ではTikTokの実況系怪談を取り上げ、口承文芸の枠組みを横溢する「怖い話」を捉えることを試みる。
【ご案内】

  • 非会員およびメーリングリストにご登録されていない方で、2021年度年次大会にご参加を希望される方は、下記のフォームからご登録ください。会員資格を問わず、どなたでもご参加いただけます。
  • ■登録後 、ZoomミーティングのID・パスコードを含む参加情報メールをお送りいたします。メールをなくさないようにご注意ください。
  • ■参加情報メールに書かれている注意事項をよくご確認のうえでご参加ください。
  • ■参加情報のメールを紛失された方は、改めて参加登録をお願いいたします。
  • 本会の会員メーリングリストにご登録をいただいている方は、年次大会前日までに会員向けメーリングリストを通じてミーティングURLとパスコードを含む参加情報をご案内いたしますので、参加登録をいただく必要はございません。
  • 《2021年度年次大会参加登録フォームはこちら》