2023年度年次大会
2023年度年次大会
■現代民俗学会会員の方には、開催日前日までに、会員向けメーリングリストを通じて、参加に必要なZoomのID・パスコード等をご連絡いたします。
■本研究会は、非会員の方にも事前申し込みの上でご参加いただくことが可能です。下記の登録方法をよくお読みください。
■会場で参加される方は、参加費300円を徴収させていただきます。
日 時:2022年5月27日(土) 11:00~17:25
場 所:京都産業大学むすびわざ館ホール(2階)
ハイフレックス開催(オンライン会議システムZoomを使用)
11:00 開会 (会長挨拶・注意事項等)
(1)個人研究発表 11:05〜12:00
11:05~ 第一報告
雷
「中国・金山農民画から見る交差的に周縁化された女性アート制作者」
11:35~ 第二報告
及川高(熊本大学人文社会科学研究部)
「都市空間の生活リズム―沖縄の観光都市の情報可視化から―」
(2)会員総会 12:00~
(3)シンポジウム 13:30~
「最近の文化政策の展開と民俗学—文化財保護・博物館の転換を民俗学としてどう受け止めるか、どう利用するか—」
趣旨説明:
村上忠喜(京都産業大学)
発表者:
半田昌之(日本博物館協会)「「ICOM新博物館定義と博物館法改正—議論の先に見える博物館—」
小林稔(國學院大學)「保護法改正の背景と文化財保護の行方—無形の民俗文化財を中心に—」
山泰幸(関西学院大学)「地域に関わる民俗学―まちづくりの実践経験から—」
休憩
コメンテーター:
後藤知美(東京文化財研究所)、塚原伸治(東京大学)
ディスカッション
司会:
村上忠喜
コーディネーター:
村上忠喜・後藤知美
後援:京都民俗学会
趣旨説明:
ここ数年間の間に、文化財保護や博物館に関する政策的な転換が進行している。その転換の肝は、文化財保護や博物館に〈地域課題に向きあう姿勢〉を求めることであり、それは民俗学、特に現代民俗学が求めている課題とも呼応する。
ただし現状、文化財保護や博物館の現場において、そうした課題を解決するには圧倒的な人手不足であることは否めない。その一方で、そうした課題の最前線に民俗学分野の担当者が立つことは想像に難くないのである。
これまでアカデミズムはそれぞれの分野における専門的な知の蓄積をもって文化財保護や博物館をサポートしてきた。もちろん民俗学もそのひとつであったことに違いはないが、今後、それだけではなく、地域の課題に向き合う中で、課題解決にむけてのアドバイスや、そうした実践そのものを研究する姿勢が求められるのではないだろうか。
本研究会では、直近の政策転換に関する事実認識の共有を前提としつつ、民俗学としてどのように対応していくのか、あるいはしないのかについての議論を試みる。
まず第1報告では、新博物館定義における議論とその背景をトレースしつつ、文化芸術基本法や博物館法改正に影響を与えた考え方を通して、今後の博物館に求められる姿を模索する。
第2報告では、今回の文化財保護法改正に結び付いていく思想的、制度的背景を中心に紹介しつつ、文化財保護行政が民俗学に期待すること、あるいは期待したいことを模索する。
第3報告では、民俗学者が地域に向き合うこと、その実践を通して何が言えるのかを紹介しつつ、地域課題のひとつでもある文化財の扱いについて言及する。
以上の報告を踏まえ、2名のコメンテーターによるコメントの後、フロアおよびオンライン上のフロアとともに議論を深めたい。(文責:村上忠喜)
第1発表 半田昌之 「ICOM新博物館定義と博物館法改正—議論の先に見える博物館—」
2022年8月に採択されたICOM(国際博物館会議)の新たな博物館定義では、気候変動等による地球的課題とともに、紛争等による社会的課題が顕在化するなかで、博物館が果たすべき役割の方向性が示された。一方、本年4月に施行された我が国の改正博物館法では、1951年の同法の制定から70年を経た日本社会と博物館を取り巻く環境の変化を背景に、これまでの社会教育機関に加え、文化施設としての博物館に対する多様な社会的期待が盛り込まれた。こうした国際的にも国内的にも博物館が大きな転換期を迎えるなかで、これからの博物館の社会的役割に対する多視的な議論が求められている。
第2発表 小林稔 「保護法改正の背景と文化財保護の行方—無形の民俗文化財を中心に—」
文化財保護法は、いくつかの変遷を経て今日に及んでいる。なかでも今般(2018・2021年)の法改正では、質的な大きな変革があった。かいつまんで言えば、法的な運用上の主体が地方公共団体(主として市町村)に移行したということである。つまり、およそトップダウンに準じていた法体系はボトムアップ化し、近年にみる法整備のあり方と同様、従来型の規制法から事業法に転じた。こうした制度的背景には、特に2000年前後からの地域(地方)重視の施策展開がある。今、文化財保護に求められているのは、地域自らの内発力の醸成であり、ここに地域研究と不可分の民俗学の関与が期待される。とりわけ過去(歴史)と相談できる学として、その存在意義は小さくないと思われる。
第3発表 山泰幸 「地域に関わる民俗学―まちづくりの実践経験から—」
発表者は,徳島県西部の過疎地域において、まちづくりの活動に外部支援者として実践的に関与しながら、同時に、エスノグラフィックな調査研究の一環として、現地の役場職員や住民有志と協働しながら、十数年にわたって長期密着型のフィールドワークを実践してきた。本発表では、現地住民や関係者との地域課題に対する協働の取り組みを反省的に振り返り、外部から訪れた研究者が地域に関わり協働することは、いかにして可能になるのか、また民俗学者が地域に関わる際における文化財の意味についても考えてみたい。さらにまちづくりにおける研究者のような外部支援者の役割について考えてみたい。
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