第70回研究会「公式な秩序/ヴァナキュラーな秩序―」

第70回研究会「公式な秩序/ヴァナキュラーな秩序―政治経済の民俗学的転回に向けて―

ご案内:

  • ■本研究会は、会員資格を問わず、どなたでもご参加いただけます。ただし事前参加登録をお願いします。
  • ■本研究会は、対面参加の場合、現代民俗学会会員の方も参加登録をしていただく必要があります。
  • 日時:2023年12月9日(土)13:00~
    開催方法:対面・オンラインの併用
    会場:東京大学東洋文化研究所 大会議室

    発表者:
     河野正治・塚原伸治
      「趣旨説明」
     河野正治
      「硬直した政治権威と生まれゆくヴァナキュラーなもの―ミクロネシア人類学から考える「伝統政治」と民衆の想像力/創造力―」
     塚原伸治
      「美的コミュニケーションとしての経済と市場の相剋 ―民俗学から考える「伝統経済」と民衆の美学―」

    コメンテーター:
     加藤幸治(武蔵野美術大学教養文化・学芸員課程)

    コーディネーター:
     河野正治(東京都立大学人文科学研究科)
     塚原伸治(東京大学大学院総合文化研究科)
     菅豊(東京大学東洋文化研究所)

    趣旨:

     近年の民俗学では、ヴァナキュラーという概念を用いた事例研究が蓄積されてきた。なかには、ヴァナキュラーを民俗学の中心概念に据え、学自体の在り方を刷新しようとする動きもみられる。こうしたヴァナキュラー文化研究が、従来の民俗学では研究対象とみなされてこなかった人々の創造的な営みをその視界に収め、民俗学の研究対象を拡張したことは確かであろう。ただし、ヴァナキュラーという語の成り立ちが古代ローマの奴隷制と密接に関連していることや、政治学や文化人類学においてヴァナキュラーという概念がマイノリティの政治や周縁的な人々の経済実践を論じるために使用されてきたことを踏まえるなら、政治と経済の領域はヴァナキュラー文化研究の射程に当然含まれるべきである。本研究会ではそのような問題意識から、民俗学者と文化人類学者それぞれによる研究発表を通じて、ヴァナキュラー文化研究がいかに政治と経済を扱うことができるのかを議論する。現代民俗学とアナキスト人類学の接点について考えることも狙いの1つである(文責:河野正治・塚原伸治)。

    発表要旨:

    河野正治
    「硬直した政治権威と生まれゆくヴァナキュラーなもの―ミクロネシア人類学か
    ら考える「伝統政治」と民衆の想像力/創造力―」
     本発表は「公式な秩序/ヴァナキュラーな秩序」という本研究会の趣旨に即して、二つの秩序を視野に入れながら政治現象について語る新たな民俗学的アプローチの可能性を、具体的な事例研究とともに提示する試みである。政治という用語が指し示す対象は多岐にわたるが、ここでは民俗学がかつて議論を重ねてきた「伝統政治」の領域、なかでも民俗学的王権論に注目する。本発表ではこの主題を論じなおすための事例研究として、王制ないし首長制に分類されてきたミクロネシア連邦ポーンペイ島(旧ポナペ島)の「伝統政治」をめぐる攻防を取り上げ、二つの秩序の相克・変貌・創造のダイナミズムに満ちたものとして「伝統政治」を描きなおす。それにより、ヴァナキュラー文化研究の立場から「伝統政治」について語る具体的なやり方を示すとともに、このような手法が従来の民俗学的王権論との関係でいかに位置づけられるのかを考えたい。民衆の想像力/創造力を積極的に評価するアナキスト人類学のアプローチが、政治現象をめぐる民俗学的なアプローチといかに対話可能になるのかを議論することも、本発表の狙いである。
    塚原伸治
    「美的コミュニケーションとしての経済と市場の相剋 ―民俗学から考える「伝統経済」と民衆の美学―」
     本発表では、日本の伝統的地方都市社会における儀礼の中でおこなわれる慣習的な贈与交換と商品の売買を取り上げ、ローカルで伝統的な規範と市場の論理のあいだの相剋について考える。本研究会の趣旨に照らすならば、前者のローカルで伝統的な規範を「ヴァナキュラーな秩序」、後者の市場の論理を「公式な秩序」とみなすことが可能だろう。しかし、人びとは伝統的でローカルな慣習のなかにありながらも市場経済の中で持続的に利益を追求する取引の主体であるため、儀礼の場においても両者は出会うこととなる。本発表ではすでに発表者が検討したことがある千葉県香取市佐原の祭礼における買い物と贈与交換を事例として取り上げ、本研究会の趣旨のもとに検討し直す。この事例において人びとは公式な秩序に圧倒され、慣習に照らして望ましい形による取引は困難となった。しかし、市場の秩序は人びとの価値観までも一色に染め上げてしまうものとはならなかった。本発表では、両者の相剋のなかにあらわれる人びとの美学に着目し、二つの秩序のあいだについて考えたい。

    ■共催:現代民俗学会、東京大学東洋文化研究所班研究「東アジアにおける「民俗学」の方法的課題」研究会、野の文化論研究会(科研「ヴァナキュラー概念を用いた文化研究の視座の構築―民俗学的転回のために―」)

    ■参加登録について
    ※以下の申し込みリンクから参加登録(オフライン[対面参加]かオンライン[ZOOM参加]かを選択)をお願いいたします。

    ■東京大学東洋文化研究所での対面参加の席数は限られております(約50名、先着順)。収容可能数を超えた時点で、対面参加をお断りすることもございますので、その際は登録後送られるzoomのURLからオンラインでのご参加をお願いいたします。”

    《第70回研究会参加登録フォームはこちら》